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Oct, 2000
無線LAN実験報告書
神里 大, 三野 敦史
  1. 目的
    現在LANの構築・拡張は有線で行われており,その利点として通信の安定性や 転送速度の速さが挙げられる.しかし同時にケーブル長の限界や接続 箇所の限定など様々な制限が生じるため,機器の配置が自由に行えないの が現状である.それに対し無線は電波を用いるため,到達範囲内であれば 自由に機器を配置・移動することができる.ただし電波は障害物の影響を受 けやすく,到達範囲の広さ・転送速度・通信の安定性の面で疑問が残る. そこで本実験では無線LANの屋内接続を行い,その有用性と実用性を検証する.
  2. 実験内容
    この実験では無線LAN機器が内蔵している内部アンテナを用いて行う.実験場所は同一建物内とし, 電波の到達位置,転送速度を測定・検証する.また比較対象として有線LANを用いる.
    実験場所
    琉球大学総合情報処理センター
    使用機器
    ADTEC ADLINK 440S(11Mbps WIRELESS LAN)
    3com 3C589D(10Mbps PCMCIA LAN card)
    Melco LPC3-TX(100/10Mbps PCMCIA LAN card)
    Panasonic Let's note A1V
  3. 測定方法
    19.5MBのファイル(EXEファイル)を転送するのに要する時間と転送速度を調べる. 転送速度は同一地点からのファイル転送を3回行い,その平均値を利用し算出する. 下図が情報処理センターの内部構造である.2階ロビーに受信機を設置し, A〜Hの地点で測定を行う.
    センター2階
    センター2階

    センター1階
    センター1階

    受信地点 測定(送信)地点 (B地点)
    受信地点 測定(送信)地点 (B地点)

    無線LANの設置状況
  4. 測定結果
    各地点における測定結果は以下の通りである.C地点とD地点の結果でグレー表示になっているのは, 各地点の部屋のドアを閉めた場合である.
      転送時間(min:sec) 誤差 転送速度
    1回目 2回目 3回目
    2
    F
    A地点 0:47 0:47 0:48 0:01 3.29Mbps
    B地点 1:28 1:13 1:19 0:15 1.95Mbps
    C地点 1:09 0:56 0:57 0:13 2.57Mbps
    1:55 1:58 2:11 0:16 1.29Mbps
    1
    F
    D地点 1:44 1:26 1:40 0:18 1.61Mbps
    2:09 2:31 2:44 0:35 1.05Mbps
    E地点
    F地点
    G地点 4:31 4:50 4:15 0:35 0.57Mbps
    H地点
    有線(3C589D) 0:32 0:31 0:31 0:01 4.98Mbps
  5. 検証
    まず各地点ごとに検証する.
    • A地点
      受信側と送信側の機器の間には何も障害がない状態である. またその距離も約50cmと近いため,このA地点の転送速度が無線LANの 最大実効転送速度と考えることができる. それを裏付けるように測定結果は転送速度が無線LANの中で最も速く, 障害となるものがないため転送時間も安定していた.
    • B地点
      距離はA地点の次に近いにも関わらず,転送速度はC地点に及ばず第3位である. これは,受信側との間に壁が存在するためと考えられる.
    • C地点
      結果ではA地点の次に転送速度が速かった.B地点に比べ距離的には遠いが, 受信側の地点と直線ではないが弓なり程度で結べるため 障害物の影響が小さかったと考えられる. C地点が主計算機室の中ということでサーバからの電磁波などの影響も予想されたが, 結果から見る限り大きな影響はなかった.次に主計算機室のドアを閉めて測定を行ったが, ドアが金属製で約4.5cmの厚さがあるため転送速度が半減した.
    • D地点
      D地点は1階にあり受信側とは異なる階にあるが, 転送速度はC地点のドアを閉めたときより速い結果がでた. その後ドアを閉めて測定を行うと,転送速度は閉める前の約65%になった. C地点のように半減しなかったのは,D地点の部屋のドアが木製であり ドア下部に通気口があるためと考えられる.
    • E,F地点
      E,F地点は同じ部屋の中である.E地点とF地点の間にはスチール製の本棚が立っているが, 天井との間に約20cmの隙間がある.このEとF地点は全く電波が届かなかった.
    • G地点
      電波は届いたが,他の測定地点の結果と比べてもわかるように転送速度はかなり遅かった. また転送時間の誤差も大きく,電波が安定していなかったことがわかる.
    • H地点
      E,F地点と同じく全く電波が届かなかった.このH地点がある部屋の入口付近は 電波が届いている事を確認できたが,到達範囲の境界にあるため電波の到達具合が 不安定であった.

    以上の各地点の検証をまとめると,次のようなことがわかる.
    • 転送速度と転送時間誤差の関係
      転送速度が速いほど転送時間の誤差が小さい.これは転送速度が速い地点ほど障害物の影響が小さいため, 電波が安定しているからだと考えられる.
    • 電波の届き方
      電波が1階の天井を通過して受信側に到達していると仮定すると, 直線距離であまり差のないG地点も同等の転送速度がでるはずである. しかし実際の転送速度にはかなりの差が生じている. また,D地点においてドアを閉めた時の転送速度は,閉める前と比べ約65%に低下している. これは電波がD地点のドアを通過して受信側に到達していると考えられる. 以上のことから,電波は階段を迂回していると思われる.
  6. まとめ
    今回の検証で同一建物内で障害物がある場所や,階が違う場所でも通信できる事が確認できた. 学内LANとして用いる場合を考えると,同一階での通信では誤差が小さく,転送速度も障害となるような物がない場所では1Mbps近くあり実用範囲内だと考えられる。 しかし,ドアや壁などの障害物がある場所や,他の階では転送速度が落ち込み実用範囲内であるとは言いがたい.